ユリイカの「例の発言」とアングラカタログ13

書こう書こうと思ってから、早一ヶ月が経過しました。時期を逸した感がありまくりです。

Amazon CAPTCHA(以下、ユリイカ)の全体的なレビューは、すでに多くの方blogなどで書かれていますので、簡略に私が思ったことを。


一歩も二歩も引いたところから、あれこれ小難しい話をしていて、いろいろな視点があるんだなぁとなんともあまりにも当たり前なことを思いました。VOCALOIDに愛着を持ってる人からしたら、物足りなさや不満を感じるような内容というのが頷けますが、まぁそこは「ユリイカなら仕方ない、いい意味でね」の一言で片付けられる気がします。
個人的には、いままで考えたこともないようなことや知らなかったことがたくさん書かれており、収穫がありましたのでよかったです。


さてさて今回取り上げたいのは、ユリイカのほんの一部の記述ですが、なにかと反響があった(少なくとも私の周囲のことですが)、「例の発言」についてです。
「徹底討論 初音ミクと未来の音」のなかの、157ページ下段、DJ TECHNORCH(以下、テクノウチ)氏の発言、これがなにかと、引っ掛かるところがありましたので、ちょっと引用してみます。この前には、一般市場でもニコ動でも、VOCALOIDを使って実験的なことをする人は、あまり成功してないよねという話題があり、再生数少ないよねといった話の流れでの発言です。

ボーカロイドアンダーグラウンド集というランキングがあって、再生数一万以下のキワモノを集めて小さく人気というのはあります。そういうのを考えると、シンセサイザー初音ミクの新しい可能性はあまり広がっていない。ちょっとずつ実験がされて、ちょっと面白いねというのが散発的にある状態が続いています。


……(´・ω・`)


座談会の発言を文章に起こしてあるものなので、ちょっとした思い違いや言い間違いがあることは仕方ないことを前提の上、続けます。


まず訂正したいことは、アングラカタログは、ランキング集ではないということです。こんな細かいところにつっかかるなよと言われそうですが、もともとアングラカタログ成立の背景には、「アンチランキング」の考えがあったのではないかと思うからです。アングラカタログは、ニコニコ動画の公式のランキングや、その他VOCALOID関連のランキングではあまり話題になっていないような動画を集めたものであるので、ランキングという言葉を使われると違和感があります。ランキングでは見られないような楽曲を紹介するのがアングラカタログなのです。そこには順位付けは存在しません。


次に、「キワモノ」とされた件について。アングラカタログで扱っている楽曲の内容は、辞書的な意味でのキワモノとは隔たりがあるように思うので、ここでは変なモノといった感じで言ったのかな、と思います。
アングラカタログに載っている楽曲にだって、一時的な流行とは関係なく聴けるものが多数あると思うのですが、いかがでしょうか。


その次の、「小さく人気」について。これは否定できませんね。毎週うpされている週刊VOCALOIDランキングは1週間で30,000再生くらいされてるのに対し、アングラカタログは一番再生数の多いPART1でも15,000再生。まだまだ知名度があるとは言えません。


それ以降の、可能性云々についてですが、すでにかなり広がってるように思えるのは私だけでしょうか。キャラクターボーカルという制限を超え、さまざまに使いこなしている人もいますし、逆にその制限をうまく利用して演出の材料にしている人もいます。変わった使い方をしている楽曲は続発しており、そこに興味を持っているリスナーもいるはずです。



さて、そんなテクノウチ氏の発言を受けて、VOCALOID・アンダーグラウンド・カタログ PART13の前口上では、このようなことが述べられています。

初音ミク特集を組んだある雑誌で
キワモノを集めた動画として当カタログが紹介されていました
しかし、それは誤解です
再生数1万未到達の作り手の中から
アンダーグラウンドな精神を感じた特異な才能を発掘するのが目的です
そこにこそVOCALOIDの可能性を広げる力があると思うからです

言葉の受け取り方、なかなか難しいものです。
アングラカタログで紹介されている楽曲の中には、VOCALOIDでこんな表現ができるのか! と驚かされたものが数多くあり、それがあまりにも注目されていないことがあるので、発掘という役割を担う動画として、今後も続いてほしいです。


では、今度はカタログの感想をば。
新鮮味はなかったです。どこかしらで私が紹介した動画がそのまま掲載されているかのような構成でしたのでした。自分が目をつけていた人がカタログで紹介されるのは、嬉しいんですけどね。私はアングラカタログに刺激=新たな出会いを求めているので、ちょっと残念かなと感じたり。

刺激といえば、あまりぶっ飛んだ感じの人が紹介されていなかったようにも思います。なんかこう、こいつ紹介していいのかよ?w 的ものがあると嬉しいんですけどね。

今回のカタログ、それぞれ独自のセンスがあって、おもしろい曲を作っていて、もっと評価されてほしいと思う方々でした。

気になるところで、「これってアングラなの?」といったコメントがちらほら見受けられました。アングラという言葉が一人歩きしてしまっているのを感じます。少なくともアングラカタログでの「アングラ」は、「他の人は絶対にこんな事やらねぇ!ストイックで奇個性!」という意味なんですが、どうやらまだ誤解されているようです。
といっても、何をもってストイックで奇個性とするかは編集者次第ですので、難しい問題です。

それと、今後のカタログの形式的な面の問題をちょっとだけ考えてみたいです。UTAUの件です。個人的にはUTAUもVOCALOIDもあまり気にしないのですが、正式には別物です。UTAUだから紹介されたのか、重音テトだから紹介されたのかよくわかりませんが、VOCALOID以外の楽曲をVOCALOIDアンダーグラウンド・カタログで許容すると、厄介なことになり今後のカタログ製作者が悩むのではないかと思いまして。UTAUは重音テト以外たくさんの種類が出てきていますし、他にもAquestoneSoftalk(通称ゆっくり)、はたまた人力VOCALOIDといったものもありますし、それらを複数使って楽曲を製作している方もいます。もしそれらが1万再生以上なら、掲載基準に反するのか? などと思ってしまいます。
VOCALOID以外のソフトをいろいろ複合的に使う人も増え、複雑化しているので、例外をつくってしまったのはいかがなものかと。アングラカタログは作り手(P)単位での紹介を基礎とする以上、対象を広げるといろいろ面倒な気がします。


まぁ、あまり難しいことを考えずに、今後もアングラカタログを編集してくれる人が出てくるのを待ってます、といった無責任なワタクシでした。


最後に、いろいろと難癖をつけてしまいましたが、テクノウチ氏は、ご自身のホームページでアングラカタログを取り上げたこともあるくらいなので、理解のある方だと存じます。
http://www.technorch.com/archives/2008/05/post_312.html
ここで取り上げられた楽曲が話題になることもあるので、今後もVOCALOIDの発展を見ていってほしいです。